2015/04/03

【コラボ小説+らくがき】藍色残業ALWAYS

雪永 紫鶴 × 佐々本 コラボ企画 『藍色残業ALWAYS』



 春、それは異動の季節。

「えーっ、東條さん大阪行っちゃうんですかー?」
「ああ、大阪支部の方で総務課長に昇格になってね」
「えーすごーい!おめでとうございますー!」

 女子たちに囲まれているのが、もうすぐ異動になるうちの課の係長。
 かっこよくて優しくて、藍は入社したときから憧れていた。
 いや、好きだったと言ってもいいかもしれない。
 しかし東條は藍の入社当時からすでに女子社員が群がるほどの人気者。
 奥手の藍はとてもじゃないが、仕事以外で話すことも出来なかった。
 それでもあの笑顔が見れるだけで毎日頑張れたのに……。

「春那さんも、今までありがとう。これからも頑張ってね」
「は、はいっ」

 せっかく東條さんが話しかけてくれたのに、藍はそれしか言えなかった。





   *

 四月。
 うちの課は課長の定年退職も重なって、新しい課長が配属になった。
 常に不機嫌でいるかのような怖い顔。冷たい言葉。
 でも何より驚いたのは、その若さだった。
 東條係長と、同じくらい若い……。

「おい春那!」
「は、はいっ」

 課長に呼ばれ、音を立てて席を立つ藍。

「お前もう少し静かに立てないのか?」
「す、すみません……」

 課長の前で頭を下げる。
 怖いよう、顔見たくない……。

「おい、いつまで頭下げてんだ」
「す、すみません!」
「イテッ!」

 藍がそう言って頭を上げると、課長のあごに藍の頭が激突した。

「す、すみません!すみません!」
「あーもー何度も謝らなくていい!」

 その声音にビクッと震えつつ、藍は小さな声で「はい……」と言った。
 同じ課の人間たちもさすがに可哀想だなと思い始める。

「春那、お前これまだ責任者が東條になってんだけど?」
「え、あ、すみません間違えました!『ふじしろ』課長に直しておきますね!」

 その瞬間、課の空気が一瞬にして凍り付いた。

「……は?」

 課長の眉間にしわが寄る。
 藍はまだその理由に気がつかない。

「お前、俺の名前、もっかい言ってみ?」
「え?『ふじしろ』課長、ですよね?」

 あちゃー……と思わず皆頭を抱える。

「春那さん、『ふじしろ』じゃなくて『とうじょう』課長だよ!」

 新しく来た年配の係長が、そっと春那に言う。

「え?だって藤に城って漢字ですよね?」

 はあ……と大きなため息をついたのは課長。

「俺、藤に城で『とうじょう』。お前いくら俺が挨拶した日休み取ってたからって、上司の名前も覚えられないのか?」
「え、あ、すみません……」

 その言葉に藤城はまた一つ大きなため息をつくと、一層厳しい声音で言った。

「責任者の名前もそうだけど、こっちの書類はミス多過ぎ。あんた今まで何してきたの?」
「す、すみません……」

 藍は泣きそうになるのを堪えて、そう言った。

「……よし、五時だな。皆帰っていいぞ」

 助かった!とばかりに藤城のそばを離れようとした藍は、腕を掴まれ立ち戻される。

「春那は残業だ。この書類明日までなんだから作り直すまで帰れないぞ」

 藍はその言葉に凍り付く。

「藤城課長、それなら私も手伝いますよ」

 先程助け船を出してくれた係長が笑顔でそう言った。
 係長なら優しい、良かった、なんて藍がほっとしたのもつかの間。

「いや、心配しなくても俺が残るから平気です」
「え……っ」

 おびえるようにそう言った藍に、藤城は言う。

「何だ?何か不満でも?」

 不満なんてありすぎる!なんて言える訳もなく。

「いえ……」

 とだけ呟いた。
 そして二人を残し、皆帰って行ってしまった。

「さて、やるか」

 藤城は藍の隣の係長の席に座り言った。
 その席は今まで東條係長が座ってたのに……。
 今座っているのは鬼のような課長。
 泣きそうになるのを堪え、パソコンに目を向ける。

「まずここ、書き出しはこっちのほうがいい」

 藤城に言われた通り直していくと、あっという間に書類は完成した。

「出来た!終わったーっ!」

 伸びをしながら藍は言った。

「藤城課長、教え上手ですね!」

 とか思いつつ、笑顔で言う藍に藤城も思わず笑みをもらす。

「あんなに怖がってたくせに」
「や、だって課長いっつも怒ってるような顔してるし、声も冷たいから!でも教え方上手いし、実は優しいし!」

 それにイケメンだし!と心の中で藍は思う。

「……てか、課長も笑えたんですね」

 そう言って笑う藍の言葉に藤城は「は?」っと苦笑する。

「お前なぁ、俺を何だと思ってんだよ」
「え、冷たくて怖い人?」
「よくもまあ上司にそんなこと言えるな」
「えっ、あ、す、すみませ……!」

 『ん』を言う前に、藍は唇を奪われる。
 藍は真っ赤になって藤城から逃れる。

「な、何するんですか!?」
「何ってキス」

 あっさり言う藤城にさらに真っ赤になる藍。

「何で……っ」
「何でって好きだから?」
「……え!?」

 好き?好きって言った?

「課長私のこと、好きなんですか!?」

 はあ、とため息をつくと、藤城は言う。

「何のためにお前だけ残らせたと思ってんの?」
「え……?」

 藤城は藍の顔を両手で包みこむ。

「『らん』のこと襲うため、に決まってんじゃん」
「課長私の名前覚えてくれてたんですか?」

 ぽかんとした顔で藍は言う。
 いつも『あい』と間違えられるのに。

「好きな女の名前覚えるのなんか当たり前だろ?」

 その言葉に落ち着き始めていた頬の火照りが蘇る。

「そういや誰かさんは上司の名前間違って覚えてたもんなー」
「だからすみませんって謝ったじゃないですか!!」

 真っ赤な顔で主張する藍。

「嫌なら逃げろよ?」
「え……?」
「て、言おうと思ったけど止めた。嫌でも逃がさない」

 そう言って藤城は藍に口づける。
 次から次へと熱いキスの雨を降らせる。
 きっとこのまま、身体だけじゃなく心も、この人に捕まる。
 とろけそうな頭で、藍はそう感じた。





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はい!

突然小説から始まりました、『藍色残業ALWAYS』
こちらは佐々本とその友人、雪永氏によるコラボ企画ですっ(キリッ)

小説が雪永氏、そしてそれを元にイメージイラストを描かせてもらった佐々本。。。

      ↓



ダイナミックにはみ出し!!

はいいとして

う ち の 子 を 描 く 時 と の 気 合 い の 入 り 方 が 違 う


そんな感じで楽しく描かせて頂きました〜♪
紫鶴さんには、左上の「かわいいなくそ」が好評…(笑)




ことの始まりは、紫鶴さんがある日
「短編小説が書きたい。」と言い始め。。。

佐々本がネタを提供、そのキーワードが
『大人の恋愛・オフィスラブ・残業』だったのでした。
(今まで紫鶴氏の小説にないジャンルで攻めてみた)

名前も提案して、後日完成となるか、と思いきや
その日のうちに仕上げてしまう雪永さん。

速筆…!!

いや〜 このバリバリ仕事できてドSっぽいけど
藍ちゃんには結局甘くて仕事のミスも許しちゃう
的なキャラが好きだ!ZE!
藍はとりあえずミスを減らす所から頑張って頂きたい。笑



雪永さんちには他にもきゅんきゅんな小説が載っていますので
ぜひご一読あれ!
恋愛・ファンタジーが中心です☆

管理人:雪永 紫鶴

小説のページはこちら★
http://blmnstories.blog.fc2.com/



2013. 9/20
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