雪永紫鶴 × 佐々本 コラボ企画2
『記憶樹の巫女は空を知る』
ここは色彩の星クルール。
獣人と、今や希少となった純人間が共存する星。
この星は各地に記憶樹という、その地の過去から未来まで全ての記憶を持つ樹を有し、その中心に位置するブランの国には、各地の記憶樹の根が集い、この世界全ての記憶を持つ『永遠(はるか)なる記憶樹』が存在する。
人々は記憶樹の知る未来を、純人間の中でも数少ない特殊な『鍵』を持つ『巫女』の力で知ることで、災いから身を守ってきた。
これはそんなブランの国の神官ガクナと永遠なる記憶樹の巫女ロヴィッサの話である。
*
あー……めんどくせぇ。
何で神官の証とか持って生まれちまったんだろ……。
そう思ってガクナは左腕の花の証を見る。
花の神官の仕事は、巫女の世話役。
それはとても名誉ある仕事であり、生まれつき花の証のある者にしか務めることは許されない。
故にその証を持つ者は神に選ばれたものだと言われ、最高神官と呼ばれていた。
しかしガクナにとってはその証も呼び名も迷惑でしかない。
その証を持って生まれたが故、世話役という義務を負ってしまったのだから。
「「あー神官やめてぇー」」
同時に言われた言葉にガクナは振り返る。
「当ったりー」
表情もなく言われた言葉。
「ロヴィッサ!?……様」
「別に呼び捨てでいいのにー」
「そんな訳には……」
「そんなこと出来る訳ねぇだろうがー」
ロヴィッサはガクナの隣にしゃがみ込み、膝に頬杖をついて言う。
「……人の心読むの止めてもらえませんかね」
「ガクナの心なんて読まなくてもわかるからー」
特大のため息をついてガクナも腰を下ろす。
「で、今度は何をしろと?」
ロヴィッサは何かしてほしいときにこうしてガクナの元へ来るのだ。
「ううんー今日はガクナの望みを叶えにきたのー」
「……は?」
「神官やめさせてあげようかと思ってー」
ガクナはその言葉に嫌な予感を覚える。
「俺に何させる気ですか?」
「私を一緒に外に連れてってー」
「…………は?」
おいおい、それって……。
「うんーまあ罪っちゃ罪だよねー」
「罪っちゃ罪じゃなくて超大罪ですよ!!」
記憶樹の知る未来は巫女の持つ『鍵』がなければ見られない。
しかし『鍵』は巫女にしか使えない。
つまり巫女がいなければ記憶樹から未来を伝えられるものがいなくなってしまうのだ。
いつ災いが起こるか予見が出来なくなってしまう、それすなわち災いから避けられなくなるということを意味していた。
「あんたは俺を死刑にする気か!?」
さすがにガクナも敬語を忘れた。
「だから言ったでしょー?一緒にってー」
「…………は?」
「ガクナも一緒に行くのよー」
「…………は?」
ガクナの思考は停止した。
「一緒に行って記憶樹の声聴きながら逃げれば捕まらないでしょー」
「……記憶樹ってそういう使い方して良いもんなんですか?」
「さあー?」
ロヴィッサはただただ前を向いたまま答える。
「前例ないからねー」
そりゃそうだ。
それ以前に記憶樹を祀る神殿を出ようとした巫女がいないのだから。
いや、待てよ。
てことは結局、他の記憶樹の声聴くときに神殿に入らなければいけないから、そこで捕まるんじゃ……。
「大丈夫よー。他の神殿には巫女しか知らない抜け道があるものー」
「ちょ、だから心読むのやめ……て、え……?」
「あるのよー。永遠なる記憶樹が教えてくれたわー」
おい、そこは教えていいのか……。
「いいから教えてくれたんだと思うわー」
「だから……」
「読んでないわーガクナの心なんて読まなくてもわかるからーかっこにどめー」
「…………」
「そうと決まったらとっとと一緒に行くのよー」
ロヴィッサは立ち上がり、ガクナを引っ張って立たせる。
「ちょっと!まだ決まってな……!」
「決まりよー」
そういうとロヴィッサはカチューシャを身につける。
するとロヴィッサの人間の耳は見る見るうちにうさぎのそれに変化した。
「さすが産業の国アマレロ製ねー。ばっちりうさぎさんになったわー」
「ちょ……そんなものどこで……」
「取り寄せたのよー。通販でー」
「通販……てロヴィッサ様が……?」
「そうよー。ガクナ名義でねー」
それってつまり。
「早く逃げないとガクナ捕まっちゃうかもー?」
「いや、捕まるっつーかもう結局全部俺の責任問題じゃないですか!!」
耳を買ったのがガクナだと調べがつけば結局そそのかしたと言うことになるだろう。
「神官、やめられるでしょー?」
ドヤ顔で笑うロヴィッサ。
ふとガクナはどこからかざわざわと人の集まる音が近づいてきていることに気付く。
「あーもう!!やめられるじゃなくてやめさせられる、でしょうが!!しかもあんたのせいで!!」
そう言うとガクナはロヴィッサを抱き上げ、走り出した。
「わーこれ、楽ちんねー」
「あんたの足じゃ追いつかれるんですよ!!」
そしてガクナは、近くのレンガのひとつを足で押し込んだ。
途端に来た道を塞ぐように石が大量に降って来る。
「おおー。ガクナすごいねー」
「ったく!!あんたから逃げるために作った罠を、まさかあんたを連れて逃げるために使うことになるなんて思いもしませんでしたよ!!」
そして次の角を曲がったところで、止まるとまた近くのレンガを足で押し込む。
すると今度はレンガが崩れ道が現れた。
「ここにも抜け道、あったのねー」
「俺が作ったんですけどね!!ていうか本当は全部知ってたんでしょう!?」
「何のことー?」
「あんた一人で神殿の外で暮らせる訳がないから、俺を巻き込んだんでしょう!?」
ロヴィッサが指を軽く振ると、暗い道を照らす柔らかな明かりが指に灯った。
「ガクナは優秀だからー」
「……ったく!!」
走る先に、眩しい光が見えてくる。
「……空って本当に青いのねー……」
暗いトンネルを抜け、巫女は初めて神殿以外の景色を見た。
これが、二人の冒険の始まりだった。
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藍色残業ALWAYSの雪永紫鶴氏とのコラボ第二弾!!
いかがでしたしょうか??
私担当…ロヴィッサのキャラ案とネタをちょい出し
紫鶴さん担当…ガクナくんキャラ案&小説 にしてくれました\( ˆoˆ )/\( ˆoˆ )/
もうこの無気力な感じのガクナくんいじりがたまんないですハァハァ好き…(トゥンク)
ではキャラデザです。ガクナくんから〜
紫鶴さん作
狐耳・狐尻尾!!!コンฅ^•ω•^ฅコン
腕にある花の模様が神官の証。
いかにも悪そうな顔してていいー(/ω\)
これを私が描くと頭身が高くなって
こうなる。誰や…(めり込み土下座)
次〜ロヴィッサさんは私がデザイン。
腰から下げてる鍵は特に意味なくつけたんですが、
設定に活かしてくれてさすがとしか!
これを紫鶴さんが描くと
ねえ見て!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
かわええ!!!!!!!!!!!!!!!♡*。゚(合掌からの昇天)
ああ……2人ともジト目でいいコンビです、尊い…!!
おまけのらくがき
かっこにどめーのシーンが好きすぎて描かざるを得なかった!!!
紫鶴さん、コラボありがとー!!
記憶樹シリーズはもしかしたら続くかもです!
『Blue Moon』
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